〈一点ものの器-オンラインショップ「ごちそう気分」-〉
私には、ジンクスがある。買い物にまつわるジンクスだ。
先日、出逢いがあった。
【ごちそう気分】
という、作家さん手作りの陶器を扱うお店で、素敵な銘々皿を見つけたのだ。
ゴツゴツした岩のような質感で朴訥とした雰囲気と思いきや、器の底だけが緑色の、透き通った海のようになっている。
これは、「灰釉が溶けてガラス状の層になった部分(※商品説明より)」だそうで、その海模様が勾玉のような形になっている2枚を購入した。
お品物が届いて箱を開けると、可愛いショップカードと手書きのメッセージがあり、丁寧な梱包がされていた。
緩衝材での包み方に商品への愛情を感じる。赤ちゃんがおくるみにくるまれているよう。
お店が作家さんのこどもを大切に扱うということに作り手へのリスペクトを感じる。
私自身、器を買うことはあまりなく、買うとしても量産品のものを買う方が多い。
手軽だし、安いし、頑丈だし。
ハンドメイド作品は、値が張るものが多い。
がさつな私はすぐぶつけてダメにしてしまう気もする。
でも、こうして作家さんの一点ものを実際に手に取ってみると、器自体からそこはかとないパワーを感じて、家にある器が持つものとはあまりに違いすぎてビックリした。
この器が放っているのは一体何だ?
ホームページの商品紹介写真で見るのと実物は、同じだけどちょっと違う。実物にはオーラというか、凄みがある。
一つ一つ手作りしている一点ものなので、よく見比べると、円形も完全に同じではない。
柄模様を出す為に工程的には同じことをやっているのだろうけど、2枚の模様の出方は当然違っている。
この模様は世界に2つとないんだな、と思うと見入ってしまった。
ポコポコと白い粒が無造作に散っているのは夜空のようでもあるし、荒地のようでもある。
そこに水が湧き出て泡立ったまま凍っている。
「宇宙のようだ」と感じた。いや、ぴったりくる単語が浮かばなくて仕方なく宇宙と言った、見たことがない風景だから。
茶色の部分のゴツゴツも、ざらざらも、つるんとした部分も、薬が溜まってよだれや涙の形をしているところも。
「おそらくこうなるであろう」という可能性の全てから幾つかが選ばれ結晶となって、この器のなかに留められている。
削ぎ落とされた「こうはならなかった(なれなかった)」も含めて、全てがここにある。果てがない。
ハンドメイド作品は、値が張るものが多い。
なぜなら、その商品を作った労働時間と材料技術料だけでなく、作り手さんのそれまでの経験や過程があってこそ、このデザインの発想があり、味わいとなって作品になるからだ。
この器の隅から隅まで、偶然の賜物づくしなのだ。
一枚の器に、過去と宇宙が同居している。
私には、ジンクスがある。
良いと直感したお店でした買い物は、必ず満足が得られるということ。
今回私が偶然手に入れた2つの宇宙は、テーブルに収まってしまう大きさだ。
でもこれが抱えているストーリーの大きさは、私には到底はかり知れない。
【ごちそう気分】
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