〈文通〉
文通相手に手紙を書いた。仙台市青葉区にある「ニハチ喫茶」のオーナー・M穂宛だ。
手紙を書かなくなってだいぶ経つので、家にあるレターセットは100円均一で買ったものしかない。100円でも可愛いと思うものを買ったけれど、せっかく久しぶりに文通相手に書くのだから…と考え直して、丸善の文房具売り場に行き、春めいた柄のレターセットを購入した。
何も予定のない休日、書き始めたら止まらなくて、3時間くらいかかって書いた。ちまちました文字で、ぎっしり便箋6枚に渡った。懐かしい。こどもの頃はこうやって、週に何度も、友達に手紙を書いて過ごしていた。楽しいな。
シャーペンの芯が、和紙の便箋の上でかりかり削られる。なるべく綺麗に読みやすいように書こうという気持ちがあるからゆっくりめに文章を書いているのに、日頃スマホで文字を打つ時の速さで言葉が出てきて、少し戸惑った。昔はこんな風じゃなかった気がするなぁ。言葉を手書き文字で書き記すのと、言葉を機械にタイピングするの、脳みその動き方が違うのかなぁ。
ようやく書き終えて、達成感があった。時間をかけてしたためたものに封をして、似合う切手を選んで貼り付ける。なんせ和紙の便箋6枚が二つ折りになっているもんだから、封筒が少し膨らんでしまう。これもいい。中身の詰まった封筒、ワクワクする。M穂の手紙も、毎回こうやって膨らんだ封筒で来たものだ。
手書き崇拝ではないけれど、やっぱりこうして、何日かかけて相手に届いて、相手も時間をかけてそれを読むって、満ち足りた時間だなと思うのだ。
メールやLINEは、乗り換えの最中とかトイレの中で読めちゃう気がするけれど、手紙の封書が届いたら、コーヒーでも淹れて、読むための時間を整えてから、腰を落ち着けて読むと思う。
そろそろM穂に届いた頃か。外の空気のせいで、封筒は冷たくなっているんだろう。春の柄はまだ気が早かっただろうか。