たんぽぽ仮面のタイムライン

言葉と絵とお酒にムズムズします

〈映画THE FIRST SLAM DUNKレビュー〉ネタバレ有りVer.3「登場人物②」

ネタバレ有り考察Ver.2(登場人物①)の続きです。

▼▼映画に織り込まれたメッセージの考察はこちら

4.登場人物への愛(と分析)後半

▶︎湘北メンバー

湘北ベンチ:「ゴリラダーーーンク!」と沸いて立ち上がったり、かと思えば点差が開いてお通夜みたいになったり。初戦敗退常連校っぽい反応がかわいくて良い。

メガネくん:キラキラ実力スタメンの代わりにコートに入っても物怖じせず戦えるし、1,2年にスタメンとられているのに腐らないし、マジでメンタル安定している。

メガネくんはさ、ゴリの力になろう、少しでも三井不在の穴を埋めようと、シュートめっちゃ練習したんだろうなぁ・・・。

▶︎桜木軍団(水戸洋平、大楠、高宮、野間)

桜木軍団は、ヤンキーだけど、転校生挨拶の「みゃーぎ・・・リョータっす」を見てもあいつシメようぜ、とはならなそう。

こどもの頃はわからなかったけど、水戸洋平こそいいやつなんだよな。彼も彼で色々背負っていそうだけど、花道のことすごく気にかけてくれるよね。クレバーだし。

▶︎湘北SG 14番 三井寿

映画で、バテバテのミッチーがシュパッと3P決めた瞬間、Swish da 着火 you!!」って曲流れるの最高でしたね。

バカにしているとかじゃ全然ないんだけど、私、ミッチーが面白すぎるんだよな。経済力と愛情に満ちた家庭環境ですくすく育ったんだろうねと感じさせる性格とか、分かりやすくグレちゃうとことか、グレたのにタバコ吸わないとことか。あんだけ酷いことしといてバスケ部に戻れる自己肯定感の高さとか。試合中、朦朧としながら松本に「河田は河田、赤木は赤木ってことだ・・・。そしてオレは誰だ・・・?オレは誰なんだよ?言ってみろ!」とか言うんですよ?なんなの、真夏の怪談かな?(面白すぎる)でもね「オレの名前を言ってみろ」の言葉の重さには、今回の映画で初めて気づいたんですよね。

多分高校に入ってからも、地域でも、名前より先に「MVPの人」って指さされそうだし。"今の俺"がいるのにねリョータを屋上に呼び出したのも、リョータはあの時の公園の人だって思い出した感じだったけど、三井は「バスケ部のやつに元MVPってからかわれた」と思ったからでは。だから殴るときにも「オレの名前を言ってみろ!」って叫んだんだろうね。初見では、なにこの人殴る相手に名前を呼ばすとか狂ってるって引いたんだけど、きっとそうではないよね。

さて、山王戦後半5点差に詰め寄ったときのT.O時、安西先生が「三井くんはかつて混乱を・・・ホッホッ、のちに知性ととっておきの飛び道具を」と言う言葉、「知性」の意味が映画でようやくわかった。

最大の「知性」の見せ場が、終盤ヘロヘロ状態の土壇場で、フェイクで松本のファウル誘ってからのシュートの4点プレイ原作では、流川からパス受けた自分を松本が泡喰って止めに来たときに三井が何か閃く?コマがある(原作#261)。これ、今までの3P成功率が布石になってるって気づいたんじゃないかな。

三井が「あいつめ、アワくって止めに来やがった。もうオレは腕も上がんねーのによ」と松本に聞こえる声で呟くと、松本には言葉通りに伝わる。でも、流川には「でもオレは諦めねぇ」という気持ちが伝わる(※)。どんだけわかり合っているの湘北!

※映画では、5点差まで詰め寄ったときのT.Oのベンチで「走れるスか」「もう腕上がんね」「オッケーパス出すスよ(フッ」のリョータと三井の会話でも現れてましたね。

ミッチーのヘロヘロになってからのプレイはいつも、贖罪のようで胸がヒリヒリする。スタミナ切れで守りは棒立ちになるのに、山王監督が「お手本のようだ」と認めた美しいフォームは変わらない。「ここで働けなけりゃ、オレはただの大バカヤロウだ」(原作#94)から。

▶︎湘北PG 7番 宮城リョータ

決して生意気なわけじゃない。飄々として見えるのは、ソータ直伝の教え「めいっぱい平気なフリ」をしているから。実は人見知りで内向的。

沖縄から神奈川に引っ越してきて自己紹介するシーン。言葉は沖縄の方言と違いすぎるし、教室にすしづめのクラスメイトが注目するなか、「みゃーぎ・・・リョータっす」ってなるべく標準語っぽく頑張って言ったら「すかしてんな」と目をつけられるという悲しさ

さっきの安西先生の三井評「知性」同様、宮城評「スピードと感性」の「感性」ってどこ?とも思っていた。原作読んだだけでは、感性ってファッションセンス抜群なところかな?と思っていたので。リョータにこんな生い立ち設定が隠されていたとは。

映画で強調されていたと思うのは、繊細な性格。試合中、「すげ」「おお」とチームメンバーのプレイに素直に反応する。ベンチ含め周りの様子や変化をよく感受している。こんなにくるくる表情が変わるのは映画ではバスケ中のみ。バスケはリョータの内面を解放しているのだなぁ(号泣)。

ミッチーの頭脳派4点プレイを作ったのがリョータのノールックパスなんだけど。これ、直前のハドルで「流川がボール運んで、いけるならそのまま行っちゃえ。ダンナ、流川を見てて」ってリョータが指示出すんだよね。で、これを深津先輩が見てる(さすが先輩)。もしかしたら山王に聞こえてるか、深津先輩のことだから内容を察している(さすが先輩)。

で、ゲームが始まって、リョータがボール持って「行くぞ流川!」と言って流川とリョータの速攻(と思わせる)。カメラワーク的に映画の観客にも流川にパス出すと思わせておいて、観客側にノールックパスが飛んで来るんですよね!!で、それを鮮やかに受け取ったのはミッチーという。さっきのベンチの「走れるスか」「もう腕上がんね」「オッケーパス出すスよ」の伏線が効いている。リョータは、三井サンは絶対走ってきてくれてるって信じていたんだろうな(鳥肌)。で、知性の三井は泡喰った松本がくるタイミングを測ってファウルもらいながら3P決める。このコンビネーション、かつて殴り合ってた二人だよ?!リョータの嬉しそうな顔ったらないよ。

最後もう1つ。映画冒頭から、ソータと1on1でドリブルのボールがこぼれたのを体勢崩しながらサッと追ってドリブル再開する場面が何度もあるんですけど。これさ、最後のプレスを突破するときに集大成的に活かされていたよね。深津と沢北の間を、ボールをかなり前に行かせてから二人の隙間に体を捩じ込んで、転びそうな勢いでボール拾って進むの。小さい頃にソータが教えてくれたドリブルで、山王を抜くんだよ・・・!!

▶︎リョータ

映画後半の「お母ちゃん大変!」とアンナが叫んで、リョータらしき人が家で倒れているシーン、必要性がわからなかったけど、あれは屋上事件の後の出来事かなと気付いた。

当時の母は、母だけで一家を支えている状態。明らかに暴行受けて帰宅したリョータに声をかけても何も言わず自室に閉じこもっちゃうし、その後バイクで事故を起こすし(また一人家族を失ってしまうってすごく怖かったと思うよ)。そんな状況に「もうどうしたらいいのよ・・・」と惑う母の描写に必要だったんだな

で、上述のシーンに続いて父失って仏壇で泣き崩れる母のシーンのリフレイン。映画冒頭と違うのは、ソータが母の背後で立ったまま泣いている。それは、死後だから、ソータ自身は何もできない。で、縁側に立っていた昔のリョータが一歩踏み出し、現在のユニフォーム姿のリョータに変わり、母を抱きしめる。これは、家族の”キャプテン”になった瞬間ということ。

でも、私の個人的な意見としては、この描写は素直に受け入れ難かった。母の辛さも察するには余りあるけど、「生きているのが俺ですみません」って気持ちを抱えて生きている未成年のこどもの方がよっぽど辛いはずだから、子が親を抱きしめるという演出は親目線としては違和感がある。でも冒頭のシーン「俺がキャプテンで、お前が副キャプテンだ」というソータのセリフを回収するにはこの描写が最適解なのだろう。

Twitterで「家父長制からの解放」と表現している方がいらっしゃったのが、とても腑に落ちました。いわゆる「皆を引っ張っていく」ような家父長的なキャプテン像ではなく、弱さも傷みも抱きしめ肯定し共に乗り越えていく、リョータなりのキャプテン像なのではないか、という風に私は思いました。

5.おわりに

長々とマニアックなお話にお付き合いくださり、ありがとうございました。

周りにスラダン映画観た人があまりいなくて、おすすめすると「そんなに良いなら観たいんだけど、昔に一度漫画読んだきりだから内容あんまり覚えてなくて・・・」と言う。そんな時のために私は「じゃあコレどうぞ・・・」って差し出せるように、原作全巻持ち歩いておかなきゃなって思うほどだよ(やめておけ)。だいすきスラムダンク

映画を見ながらメモを取ったのは初めてだったわ(指にインクが)
メモ帳は、推し企業「ヘラルボニー」のノベルティ

好きなもので周りを固めて生きていきたい。

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