〈問い〉
以前家族で入ったレストランで、案内された席の真横の壁にポスターが貼ってあった。
復刻版と思しきレトロなデザインで、飛行機と二本のビール瓶の絵、その下に横書きで大きく
【ルービロポッサ】
と書いてある。
こども達にポスターを指して、
「アレ、なんて書いてある?」
と聞くと『ルービロポッサ』とたどたどしく読んだあと少し間があって
「サッポロビール?」
と言った。私は
「うん。なんで逆向きに書いてあるんだろ?」
と重ねて聞くと、2人はウーンと考え始めた。
横書きなのに右→左へと読む理由は
『元々日本語は縦書きで右から左へ読んでいた。やがて外国の言語が入って来、その時期に日本語を横書きすると、今までの縦書きの名残で右から左に書くこともあった。』
というのが私の知っている答え。
それをいきなり教えてもつまらないので、2人がそれぞれ2個ずつ自分の考えを言ったら答えを教えるねと伝えた。
普段は正解を早く知りたがる子Bも、いつもより少し長く考えて、アイデアを出した。
「ルービロポッサと読ませたかった」子B
「真ん中の四角(ロ)の右と左で、ルービとポッサという名前」子B
「逆さまに書くことで、〈ビール〉が〈ルビー〉にみえる」子A
「お店の鏡やガラスに映ったときに読めるように」子A
「ビール瓶に巻いた状態でも読めるように」子A
「右利きが多い日本で、ビールを瓶からコップに注ぐときに、瓶を持ち上げると底(右端)が上になり、右(上)→左(下)でサッポロビールと読めるから」子A
夫と共に、こどもらの自由な発想を聞くのが面白くて、「他には?」「別の案は?」などと聞いていたら、だんだん、正解が言いづらくなっていった。
正解よりもこどもたちの予想の方が、意表を突いていて断然面白い。
しかも私は、ポスターを作案した人からデザインの意図を聞いたわけではないので、果たして自身のもつ答えを正解と言ってよいのかどうか、疑わしくなっていった。
そして、最後に私が、縦書きと横書きの話を教えたらこどもらは
「答えがつまらない」
と白けてしまった。うん、たしかにこれが終着点なのはつまらない。
---
ちょうど、「13歳からのアート思考」(末永幸歩 著)を読了した。
現代では自分で思考し自分なりの答えを出せる力が求められている、という内容の本。
隙間時間に読むので数ページずつしか進まなかったんだけど、レッスンを受けているようにするすると読めた。
そして自分の中の「常識」がベリッベリに剥がされていく驚きと気持ちよさ。
引用されていたスティーブ・ジョブズ氏の「点と点がつながる」のフレーズは実際感じてきたことが言語化されていて、ああやっぱりそうなんだとしみ入った。
つまり、好きなことや興味のあることをその時々に一生懸命やっていれば、一見ジャンルはバラバラでも、散らばってたはずのものが不意にスルンと繋がるよという話。
もしやこれが生きることの一つの醍醐味なのではと感じる。
---
そういえば、図工や美術で、仕上がりの美しさや技術の到達度よりも、それぞれの表現したものの経緯や動機を汲んでくれる先生の方が大好きだったよ。
私も、日常の出来事をアート思考で消化することを心掛けたい。
おやすみなさ〜い。