たんぽぽ仮面のタイムライン

言葉と絵とお酒にムズムズします

〈虹色彩〉

小学校の廊下に張り出された、社会科見学の新聞記事を読んでいた。一人一枚、学んだことを振り返り、壁新聞の形式でまとめていた。

自分が中に入れる巨大シャボン玉装置の記事を書いている子が何人かいた。巨大シャボン玉の仕組みとしてはこうだ。輪の中心に自分が立つ。輪のくぼみにはシャボン玉液が入っていて、持ち手付きのフラフープのようなものがはまっていて液に浸されている。輪の外にいる人がそのフラフープ状のものを高く持ち上げると、足元から頭の上までシャボンの膜が持ち上がり、輪の中に立っている人は自分がシャボン玉の中に入っているように感じる、という仕掛け。

なるほどこどもの好奇心をそそる装置だなぁと読んでいたら、とある子の書いた一文にハッとした。正直なところ、涙が出そうになった。その文章はこうだ。

中から見ると、光の当たり具合で外が虹色に見えたりします。

内側から見た光景を書いたのは、見た限りではこの子だけだった。説明文の中に一つ、生身の体験から出た言葉。私にとっては、そこだけ色が染め付けられたように美しい一文に思えた。

シャボン玉は、自身が虹色なだけでなく、私たちの生きている世界も虹色に見せてくれるんだという発見。私は知らなかった。しかも常に虹色に見せるのではなくて、光の当たり方によって起きるということ。

見たままを投影する日常のなかでは、辛いこともそのまま映し出されるけれど、この世界が虹色に見える瞬間があるんだな。私が気づいていないだけ。そう感じて泣きそうになったのだ。

この子はこの文章にそこまでの意味を含んでいないかもしれないけれど、すれっからしの私の心には沁みた。

私の毎日の積み重ねのなかにも、虹色の瞬間がきっとある。たぶん明日のどこかにも。

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