〈よいお年を〉
小学生の時に、算数の答え合わせで「いいです」や「同じです」とクラスの皆で声を合わせながらマル付けをしていくのは、全国共有だったろうか。
現役小学生の我が子に聞いたら、今もあると言う。
私の母校にも、それがあった。
計算ドリル3ページ分を一気に答え合わせする、などの場面で、列の前から順に「125」「386」とか言って行って、自分の出した答えと合っていたらその度「いいです」と言う。
大抵は皆、自分の番に来る前に前後左右の子と正解を確認し合った上で答えを言うので、クラス全員で「いいです」をリズミカルに斉唱することになる。
うっかり間違えると、順調に流れてきた「いいです」「いいです」のリズムが途絶えて気まずい思いをする。
そんな小学生の時に流行った、伝説のバスケット漫画「スラムダンク」。
私も例に漏れずこの作品が大好きだった。
はじめは、週刊少年ジャンプで漫画が連載されているのを知らず、テレビのアニメだけを観ていた。
ある晩アニメを観ていたら、小暮くんたちがベンチから必死に「ディーフェンス、ディーフェンス」と言っているのを聞き取れなくて、そばにいた父に、ありゃなんて言っているんだろうね、と話をした。
父は、
「あれは、『いいです、いいです』と言っているんじゃないかなぁ。選手のプレイをああやって褒めているんだな」
と説明してくれて、私は成る程と思ってすんなり信じた。
衝撃を受けたのは、その後初めて漫画でスラムダンクを読んだときだ。
そう、単行本で小暮くんから出ている吹き出しの中には「ディーフェンス、ディーフェンス」と書いてあったからだ。
私は体育の時、調子に乗って「いいです、いいです」と応援してなかっただろうか。
知ったかぶって誰かに教えたりしなかっただろうか。
冷や汗と動悸が激しくなって、このまま恥ずかし死にをするかもしれないと思った。
そんな時代もあった。
…と切り離して言いたいところだが、恥ずかしいエピソードの増産は相変わらず止まることを知らない。
「恥ずかし死に」で脳内を検索すると、溢れ出す幾多の記憶。
ひとの人生を構成する基本的な成分は、こどもの頃からさして変わらないものなのか。
一日早いけれど。
今年も温かくお付き合いをしてくださった皆さま、どうもありがとうございました。
来年も何卒よろしくお願いいたします。
お互い健康に気をつけて、明るく前向きに、充実した一年になりますように!