たんぽぽ仮面のタイムライン

言葉と絵とお酒にムズムズします

〈画家のサイン〉

アントワープ王立美術館コレクション展」に行ったのは、数点だけ展示されているルネ・マグリットの絵を見るためだった。

f:id:retimeline:20211211174841j:plain

ミュージアムショップで購入したポストカード
ルネ・マグリットL'empire des lumières(光の帝国)」

マグリットの絵はひんやりしていて怖いし、錯視みたいな違和感がその夜の夢に出てきそうでドキドキする。画集は持っていないけど美術館には観に行きたいなという程度の、ライトな「好き」だ。

美術館で、マグリットを見つけるまでに多くの絵画を観て回るうちに、絵の隅に記してある画家のサインが気になるようになった。

おそらく絵筆でさらさらっと描かれたであろう筆記体のサインや、ロゴマークのように丁寧に描き込まれたサイン。なかには幼児の覚えたての字のようなサインもあって、あまりの悪筆ぶりにビックリして動けなくなったりして。絵は頑張って描いたのに、仕上げのサインはなんでこんなに適当なのか。なんかちょっともう、つかれちゃったのかな?

凹んだときや気分転換したいとき。ビールかワインを飲む(気分転換になる)、缶チューハイを飲む(どうでも良くなる)、泡盛を飲む(今夜は捨てる)、などの方法があるなか、1番健康的なセラピーはノーマン・ロックウェルの画集を眺めることだと思う。彼の描く絵はなぜだか涙が出てくる。

f:id:retimeline:20211211174015j:plain

ノーマン・ロックウェル画集」(白泉社)より
▶︎visits a County School(1946) 先生達から離れて一人読みたい本を読む少女への肯定的な眼差しを感じる
▶︎Doctor and Doll(1929) 人形の診察をする医者と不安げに見上げる少女の対比が可笑しい
▶︎The Runaway(1958) 冒険?家出?の少年を気にかけつつ一人前の存在として応対する警察官とマスターがいい (体格差もいい)

ロックウェルの絵は、人間の良いところもしょーもないところも、丸ごと肯定してくるから不思議だ。マンガのような吹き出しもない一枚の絵が、こんなにも饒舌なことってあるんだなとビックリするし、元気がないときに眺めるとあったかい気持ちになってくる。登場人物がオーバーな表情をしている絵より、姿勢の傾きとか目線とか腕に浮き出た血管とかでストーリーを感じさせてくれるような絵が特に好き。

そうそう、ロックウェルのサインは、ロゴのようで、さりげなく主張しつつも絵に溶け込むように差し込まれている。それもとても好き。