たんぽぽ仮面のタイムライン

言葉と絵とお酒にムズムズします

〈M子の仕事〉

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M子との一番古い思い出は、中学の時に「その鮭ふりかけってどんな味?」と言われてお弁当のご飯を一口食べられたこと。
その後少し喋るようになって、同じところで笑ったら「あんたとはウマが合いそう」とケラケラ笑いながら言われて好きになった。

M子とは学生時代に時々、小劇場の受付仕事の手伝いをした。
制作スタッフの腕を磨いたM子はいつしか受付チーフを任されるようになり、M子が仕切る仕事は私にとってすごく楽しく、気持ちが良かった。

M子は元来、頭の回転が早く真面目で細かいところにも気が回るので、突然ぽいっと振られた仕事でも感心されるような働きをする。
特に受付チーフでの、彼女のあの頼もしさはどこから来るのか。
彼女がチーフだった日の劇場からの帰り道に、その日の出来事を思い返して、答えが出た。

M子の仕切りが何故気持ちいいのかというと、『意図がはっきりしているから』。これだなと。

公演の受付は、チーフによってあるいは公演団体によって千差万別の仕事の捌き方がある。

けれど、M子のやり方はきっと、どこの誰が手伝うことになっても
▶︎今おこなっていること、これからおこなうべきこと
▶︎最低限やるべきこと
▶︎絶対やってはいけないこと
が理解しやすい方法だった。

例外的なことが起きて今チーフに確認している暇がない!という時でも、上記の3点がわかっていればそんなに非常識な判断にはならない。
M子の仕事は緻密タイプかザックリタイプかと言えば緻密な方に分類されると思う。
念入りな仕事をするチーフは、それだけ団体からの信頼も厚いけれど、その分ポリシーというか、マイルールが確立されている人が多いので、平スタッフはそのチーフの細かさの按配がわかっていないと自主的に判断しづらい。
その点、M子の指示は
「こうして。◯◯関係はいずれああして処理するからザックリでOK」
「こっちを先にやって。後から辻褄が合わなくなった時に遡れるように、その都度処理しておいてほしい」
など、理由を示してくれるから応用がきく。
細かいから色んな人が色んなことをM子に確認しに来るんだけど、それにいちいち迅速に答えるのもいい。
(自分が細かいから周りが尋ねてきてるのに、「そんなのいちいち私に聞かないでよ」と不機嫌になるひともいますもんね。)
見習うべきところだなぁ、と感心したわけです。

余談だけど、M子の仕事ぶりも、M子の握るおにぎりの鋭角具合も、M子の鉛筆の削り方も、共通項がある、というか、もはや美学。
理路整然とした仕事ができるひとで、尊敬してしまう。
超絶大好きな友人M子の話でした。

〈傘をさすな、それはパンツだ〉

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占いやおまじないが大好きだった私は、小学校高学年あたりに、『心理学』というお勉強のジャンルがあると知り、興味を持った。
そして何かの本で(本当の研究結果かガセネタかは覚えていない)、こんな記載があった。

「傘の柄の好みとパンツの柄の好みはおなじ。」

それはもう、たんかめ少女には衝撃的だった。

雨が降った夜、この話をこどもらにしてみた。
「知ってる?傘の柄とパンツの柄の好みって一緒なんだって。だから、傘が赤だったらその人のパンツも多分赤だよ」
こどもらは一拍置いたあと、
「えっ。じゃあ、ビニール傘の人は透明のパンツ…?」
と恐る恐る聞いてきたので思わず笑った。
「えっ。じゃあ、雨でも傘をささない人は…?!」
「履いてないの…?!」
と震えながら笑っている。

たしかに。
傘の柄イコール、パンツの柄、それは、ないか。
一昔前は傘をあつらえていたから好みが反映されていたかもしれないけど、現代は手軽に買えるしね。
こどもに指摘されるまで気づかなかった、ン十年間信じていたたんかめでしたよ。

ゲーテが「時よ止まれ、お前は美しい」と書いたこの、ビシッとした名言が格好良くて、私も何か言いたいと思ってこのタイトルにしました。
〈傘をさすな、それはパンツだ〉
ゲーテに対して、私なんぞに扱えるものは所詮、パンツだよ。

〈一点ものの器-オンラインショップ「ごちそう気分」-〉

f:id:retimeline:20211006221035j:plain私には、ジンクスがある。買い物にまつわるジンクスだ。

先日、出逢いがあった。
【ごちそう気分】
という、作家さん手作りの陶器を扱うお店で、素敵な銘々皿を見つけたのだ。

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〈魔女〉

f:id:retimeline:20210929143350j:plain近所の小学校の図書室には、司書さんが常駐していないらしい。


私が高校3年生の時、昼休みに一人で図書室に通い詰めていた時期があった。
図書室のカウンターにはいつも、黒づくめの服装で、黒髪のおかっぱ頭に赤い口紅の、小柄で華奢な年配の常駐司書さんがいた。
通い慣れていくと少しずつお喋りするようになり、私の好みを把握してくれてお薦めを次々と紹介してくれるようになった。

昼休み限定の、本の話題だけのお付き合いだったけど、年配の女性と本を介して親しくなっていく特別感にワクワクしたものだった。

私はその話を何度かこども達にしているらしく、「お母さんが高校の時に図書室で」
と切り出すと
「知ってる。図書室の魔女の話でしょ」
と言われる。図書室の魔女。何その小説みたいなタイトルは。
でも、そう、確かに、彼女は図書室の魔女だった。
受験を視野に自分の学びたい学問分野がわかってきて、細かい活字の分厚い本が読めるようになった私に、読書の道筋を示してくれた魔女だった。

図書室の魔女が、小学校に居ないのはとても惜しい。
司書さんがいなくて、今のこども達は何の情報から本を手に取るんだろう。