たんぽぽ仮面のタイムライン

言葉と絵とお酒にムズムズします

〈△を書くのです〉

おっとりした童話口調が好きだ。
「むかしむかし、おじいさんと おばあさんが ありました。ふたりとも たいへん ほがらかで、ちっとも ぶつぶつ こごとなど いいません。」

そりゃあ小言なんて言わないだろうよ。
お日様の恵みに感謝し、1日がかりでジャムを煮て、ラベンダー畑にシーツを広げて干すんでしょう?
夜はラベンダーの香りに包まれ穏やかな夢を見るんでしょう?

 

20歳の時に自動車免許をとった。
適正審査というペーパーテストがあり、⬜︎⬜︎⬜︎……と200マスくらい並んでいる⬜︎の中に、時間内にできるだけたくさん、△を書いていく。
その説明文の口調がおっとりしていて面食らったので、今でも覚えている。
確かこんな感じ。

「左から右へ順番に、⬜︎のなかに一つずつ、△を書いていくのです。
見本のように、少し歪んでしまった△でもかまいません。
とにかく、極く素早く△を書いていくのです。
ただし、◯になってはなりません。
△を書くのです。」

 

△を書くのです。
坊や、△を書いていくのですよ。
ただし、◯に見える△はいけません。
きちんと三つ、とんがりをつけなくてはなりませんよ。
とにかく、△を書けばよいのですから。

 

うん、うん、わかったよママ。
僕ひとりでできるから、もうなにも言わなくていいよ。

っていう気持ちになったなぁ。